NPV(正味現在価値)とは

NPV(エヌピー ブイ)とは「Net Present Value」の略で、日本語では「正味現在価値」と呼ばれます。
将来にわたって得られるキャッシュフロー(お金の流れ)を「現在の価値」に割り引いて合計し、そこから最初の投資額(初期投資)を差し引いた金額のことです。

ポイントは次の3つです。

  1. 将来のお金は現在のお金より価値が低い(時間価値の考え方)
  2. その差を「割引率」を使って調整する
  3. 将来キャッシュフローの現在価値合計 − 初期投資 = NPV

NPVがプラスなら「その投資は理論的にはやる価値あり」、マイナスなら「やらない方が良い」と判断するのが基本です。

目次

NPVの計算式

一般的なNPVの計算式は次のとおりです。

NPV = Σ{ t=1 → n } [ CFt ÷ (1 + r)^t ] − 初期投資額

・CFt:t年目のキャッシュフロー(税引き後の手残りのお金)
・r :割引率(期待利回り・ハードルレート・資本コストなど)
・n :投資期間(年数)

イメージとしては、
「1年目のお金を現在の価値に割り引く」
「2年目のお金をさらに割り引く」
「3年目、4年目…も同じように割り引く」
→ それらをすべて足し合わせて、最後に初期投資額を引く、という流れです。

割引率とは何か

割引率(r)は、「自分がその投資に対して最低限ほしい利回り」や「資金調達コスト」を表す数値です。

例:
・社内の投資判断基準が「年5%は欲しい」であれば、割引率 r=5%
・借入金利+リスクを加味して「年8%で評価したい」なら、r=8%

割引率が高いほど、将来のお金の価値を厳しく見ることになり、NPVは小さく(あるいはマイナスになりやすく)なります。

簡単なNPVの具体例

【前提条件】
・初期投資:100万円
・投資期間:3年
・各年の税引き後キャッシュフロー:
 1年目:40万円
 2年目:50万円
 3年目:50万円
・割引率:5%

1年目の現在価値:
40万円 ÷ (1 + 0.05)^1 = 約38.1万円

2年目の現在価値:
50万円 ÷ (1 + 0.05)^2 = 50 ÷ 1.1025 ≒ 45.4万円

3年目の現在価値:
50万円 ÷ (1 + 0.05)^3 = 50 ÷ 1.157625 ≒ 43.2万円

将来キャッシュフローの現在価値合計:
38.1万円 + 45.4万円 + 43.2万円 ≒ 126.7万円

NPV:
126.7万円 − 初期投資100万円 = +26.7万円

この例ではNPVがプラス(約+26.7万円)なので、「期待する5%の利回りをクリアしており、理論上は投資しても良い」と判断できます。

NPVがプラス・マイナスの意味

NPV > 0(プラス)
・割引率で設定したハードル利回りを上回っている
・会社の価値(株主価値)を増やす投資とみなせる
・複数案件の中から、NPVがより大きいものを優先するのが基本

NPV = 0
・割引率通りの利回りがちょうど達成できるライン
・「やってもいいし、やらなくてもいい」中立な投資

NPV < 0(マイナス)
・設定した期待利回りを下回る
・会社の価値を減らしてしまう投資とみなされる
・原則として見送るべき案件

NPVとIRR(内部収益率)の違い

投資判断では、NPVとあわせて「IRR(内部収益率)」もよく使われます。

・NPV
 → 割引率をあらかじめ決めて、その基準で投資価値を評価する指標
 → 結果は「金額(円)」で出る

・IRR(Internal Rate of Return)
 → NPVが0になる割引率を逆算したもの
 → 結果は「%(利回り)」で出る

違いのポイント:
・NPVは「いくら価値が増えるか」がわかる
・IRRは「何%の利回りの投資か」がわかる

実務では、

  1. まずNPVで「プラスかマイナスか」「どれくらい価値が増えるか」を見る
  2. 補助的にIRRで「利回り感」を確認する
    という使い方が一般的です。

不動産投資におけるNPVの考え方

NPVは、事業投資だけでなく不動産投資にも応用できます。

【不動産投資のNPV計算イメージ】
・初期投資:物件価格+諸費用(仲介手数料、登記費用、リフォーム費用など)
・毎年のキャッシュフロー:
 家賃収入 − 管理費・修繕費 − ローン返済(元利) − 税金 など
・売却時キャッシュフロー:
 将来の売却価格 − 売却時の諸費用 − ローン残債

これらのキャッシュフローを、投資家が求めるハードル利回り(例:5〜7%)で割り引いて現在価値に直し、合計から初期投資額を差し引くことでNPVを求めます。

・NPVがプラス:
 購入することで、求める利回り以上のリターンが期待できる物件
・NPVがマイナス:
 利回りが目標に届いておらず、価格が高すぎる可能性がある物件

単純な「表面利回り」だけでなく、
・空室リスク
・修繕費
・金利
・売却価格の下振れリスク
などを織り込んで評価できる点が、NPVの大きなメリットです。

NPVを使うメリット

  1. 時間価値を考慮できる
     「今のお金」と「将来のお金」の価値を公平に比較できるため、長期投資の評価に向いています。
  2. キャッシュフローをベースに判断できる
     会計上の利益だけでなく、実際に出入りするお金の流れを重視できるため、キャッシュフロー経営とも相性が良い指標です。
  3. 投資案件同士を比較しやすい
     NPVは「増える価値の金額」を示すため、
     ・A案件のNPV:+500万円
     ・B案件のNPV:+300万円
     のように、どちらの方が会社の価値を多く増やすかを直接比較できます。

NPVの注意点・デメリット

  1. 割引率の設定が難しいことがある
     割引率の設定次第でNPVの値は大きく変わります。
     ・借入金利
     ・株主の期待リターン
     ・業界のリスク水準
    などを踏まえて妥当な割引率を設定する必要があります。
  2. 将来キャッシュフローの予測が前提
     NPVは「将来キャッシュフロー」を前提に計算しますが、
     ・売上のブレ
     ・空室率の変動
     ・金利の変動
    などによって予測は外れる可能性があります。複数シナリオ(楽観・標準・悲観)でNPVを試算するのが実務的です。
  3. 投資規模の違いをそのまま反映する
     NPVは「金額」で評価するため、初期投資が大きいほどNPVも大きくなりがちです。
     案件同士の比較では、
     ・NPV(増える価値の絶対額)
     ・IRRや投資回収期間(効率性)
    などを組み合わせて総合判断することが重要です。

まとめ:NPVを使って「数字で」投資判断をする

NPV(正味現在価値)は、
・将来のキャッシュフローを現在の価値に換算し
・初期投資額との比較で投資価値を判断する
非常に強力な指標です。

感覚や雰囲気だけの「なんとなく良さそうな投資」ではなく、
・NPV > 0 か?
・他の案件と比べてNPVはいくら違うか?
・割引率を変えるとどう変化するか?
といった観点から、数字に基づいた投資判断を行うことで、リスクを抑えながらリターンを狙うことができます。

不動産投資・事業投資・設備投資など、長期的な意思決定では、
NPV・IRR・投資回収期間などを組み合わせて検討し、自社や自身のリスク許容度に合った投資戦略を立てていくことが重要です。

目次