一棟収益物件の法定耐用年数とは|RC造・鉄骨造・木造の目安と減価償却の基本

一棟アパートや一棟マンションなどの「一棟収益物件」へ投資を検討するときに、必ず押さえておきたいキーワードが「法定耐用年数」と減価償却です。
同じ価格・同じ家賃収入の物件でも、構造や築年数によって税金の額や手残りキャッシュフローが大きく変わるケースがあります。

このページでは、

  • 法定耐用年数とはなにか
  • RC造・鉄骨造・木造など、構造別の法定耐用年数の目安
  • 中古一棟物件を購入した場合の考え方
  • 減価償却と手残りキャッシュフローとの関係
  • 法定耐用年数を踏まえた投資判断のポイント

などを、不動産投資初心者の方にもわかりやすく整理して解説します。

目次

法定耐用年数とは?一棟収益物件でなぜ重要なのか

「法定耐用年数」の基本的な意味

法定耐用年数(ほうていたいようねんすう)とは、税務上「その資産がどれくらいの期間使えるか」という目安を国が定めた年数です。
建物や機械設備などの固定資産は、購入した年に全額を経費にできず、耐用年数にわたって少しずつ「減価償却費」として計上していきます。

一棟収益物件の場合、

  • 建物価格(建物部分) … 法定耐用年数に応じて減価償却
  • 土地価格(土地部分) … 減価償却はできない

という取り扱いになります。

不動産投資における「法定耐用年数」の役割

法定耐用年数は、不動産投資家にとって次のような影響があります。

  • 毎年の減価償却費の額が決まる
  • 減価償却費が多いほど、課税所得を圧縮し節税につながる
  • 節税効果により、手残りキャッシュフローが変わる
  • 銀行融資の返済期間の目安としても意識されることがある

つまり、法定耐用年数は「税金」と「キャッシュフロー」、そして「融資戦略」に直結する、非常に重要な指標です。

構造別・用途別の法定耐用年数の目安

ここでは、一棟収益でよく出てくる居住用の賃貸アパート・賃貸マンションを前提に、構造別の法定耐用年数の目安を整理します。

※実際の年数は用途(住宅・事務所・店舗等)や細かい区分によって異なります。必ず税理士や専門家と個別にご確認ください。

RC造(鉄筋コンクリート造)一棟マンションの法定耐用年数

一般的に、居住用のRC造(鉄筋コンクリート造)建物の法定耐用年数は47年が目安とされています。
一棟RCマンションやRC造の区分マンションで、よく用いられる数字です。

  • 構造:鉄筋コンクリート造(RC造)
  • 用途:居住用(共同住宅)
  • 法定耐用年数の目安:47年

※オフィスビルや店舗用途であれば別区分となる場合があります。

鉄骨造(重量鉄骨・軽量鉄骨)一棟物件の法定耐用年数

鉄骨造は、鉄骨の厚み(肉厚)によって区分が分かれます。ここでは投資でよく目にする2パターンを簡略化して紹介します。

  • 重量鉄骨造(鉄骨の厚みが厚いもの)
    • 目安:34年 前後が用いられるケースが多い
  • 軽量鉄骨造(鉄骨の厚みが薄いもの)
    • 目安:19〜27年 程度の区分が存在
    • 住宅用アパートなどで利用されることが多い

同じ「鉄骨造」でも、構造計算や鉄骨の厚みにより法定耐用年数が異なるため、設計図書や構造計算書を確認しつつ、税理士と相談することが大切です。

木造一棟アパートの法定耐用年数

木造の一棟アパートは、比較的短い法定耐用年数が設定されています。

  • 構造:木造
  • 用途:居住用(共同住宅)
  • 法定耐用年数の目安:22年

木造は建築コストを抑えやすく、利回りも高めに出やすい反面、法定耐用年数が短いため、減価償却期間も短くなります。

中古一棟収益物件の法定耐用年数と減価償却の考え方

中古物件の耐用年数はどう決まる?

中古の一棟収益物件を購入した場合、法定耐用年数の扱いは「すでに何年経過しているか」によって変わります。
基本的な考え方としては、次のような概念です。

  • 残存耐用年数方式
    • 「法定耐用年数 − 経過年数」で残りの年数を求める
    • ただし、一定の計算ルールがあり、単純な引き算ではなく「経過年数の20%や40%」などを用いて再計算するケースもある

中古物件の減価償却では、「新築と同じ耐用年数」ではなく、中古としての残存耐用年数を使うことがポイントです。

なぜ中古一棟収益物件は減価償却に有利といわれるのか

中古一棟物件が「減価償却に有利」といわれる主な理由は、次の2点です。

  1. 残存耐用年数が短くなるため、年間の減価償却費を多く計上できる
  2. 減価償却費が増えることで、税金を抑えつつ手元に残る現金(キャッシュ)が増えやすい

つまり、中古の一棟収益物件は、短期間で集中的に減価償却を行えるケースがあり、資金効率が高まりやすいというメリットがあります。

「同じ家賃収入でも手残りキャッシュが増える」イメージ

ここでは、簡単なイメージ例で、減価償却と手残りキャッシュの関係を説明します。前提条件(イメージ例)

  • 物件価格:1億円(うち建物部分6,000万円、土地部分4,000万円と仮定)
  • 表面利回り:6%
  • 年間家賃収入:600万円
  • その他経費(管理費・修繕費・固定資産税など):年間200万円
  • 融資返済:ここではシンプルに年間300万円と仮定
  • 所得税・住民税の実効税率:30%と仮定(説明用)

パターンA:新築RC造(耐用年数47年)を購入した場合

  • 法定耐用年数:47年
  • 年間減価償却費:
    6,000万円 ÷ 47年 ≒ 約128万円/年

税引前の会計上の利益(建物減価償却前)

  • 家賃収入:600万円
  • 経費(管理・修繕・税等):▲200万円
  • 減価償却費:▲128万円

→ 税引前所得:272万円

税金のイメージ

  • 272万円 × 30% ≒ 約81万円

年間の手残りキャッシュフロー(ざっくりイメージ)

  • 家賃収入:600万円
  • 経費(管理・修繕・税等):▲200万円
  • 融資返済:▲300万円
  • 税金:▲81万円

→ 手残り:約19万円/年

(※減価償却はキャッシュアウトを伴わない費用なので、税金計算には影響しますが、現金として出ていくわけではありません)

パターンB:中古RC造(残存耐用年数20年)を購入した場合

同じく物件価格1億円で、建物6,000万円・土地4,000万円、その他条件は同じとします。
ただし、中古で残存耐用年数20年と認定され、減価償却できる期間が短くなる代わりに、1年あたりの減価償却費が大きくなるケースをイメージします。

  • 残存耐用年数:20年
  • 年間減価償却費:
    6,000万円 ÷ 20年 = 300万円/年

税引前所得

  • 家賃収入:600万円
  • 経費(管理・修繕・税等):▲200万円
  • 減価償却費:▲300万円

→ 税引前所得:100万円

税金のイメージ

  • 100万円 × 30% = 30万円

年間の手残りキャッシュフロー(ざっくりイメージ)

  • 家賃収入:600万円
  • 経費(管理・修繕・税等):▲200万円
  • 融資返済:▲300万円
  • 税金:▲30万円

→ 手残り:約70万円/年

同じ家賃収入でも「手残り」が変わる理由

上記2つのパターンを比較すると、家賃収入や経費、返済額が同じでも、「減価償却費」の違いによって税金が変わり、結果的に手残りが大きく変わることがわかります。

  • 新築RC(耐用年数47年)
    • 減価償却費が少ない → 課税所得が大きい → 税金が増える → 手残りは少なめ
  • 中古RC(残存耐用年数20年)
    • 減価償却費が大きい → 課税所得が小さい → 税金が減る → 手残りが多くなる

このように、**「同じ家賃収入でも手残りキャッシュが増える=資金効率が高い」**という状態を作りやすい点が、中古一棟収益物件が減価償却の面で有利とされる理由のひとつです。

法定耐用年数を踏まえた一棟収益物件の選び方・チェックポイント

構造と築年数で「償却戦略」を考える

一棟収益物件を検討する際は、次の点を意識すると良いでしょう。

  • 構造(RC・鉄骨・木造)による耐用年数の違い
  • 新築か、中古か、築古か
  • 自分の収入や法人の利益状況を踏まえた、節税ニーズの有無
  • 将来の売却(出口)戦略とのバランス

節税メリットだけを追いかけるのではなく、キャッシュフロー・資産価値・出口戦略を含めたトータルの収支で判断することが重要です。

銀行融資と耐用年数の関係

金融機関によっては、融資期間を検討する際に、

  • 「法定耐用年数 − 経過年数」を基準にしたり
  • 独自に「残りの経済的な耐用年数」を評価したり

するケースがあります。
融資期間が短いと毎月の返済額が増え、キャッシュフローが圧迫される可能性があるため、法定耐用年数とあわせて、銀行側の融資スタンスも事前に確認しておきましょう。

一棟収益物件の法定耐用年数についてよくある質問(FAQ)

Q1. 法定耐用年数が過ぎた建物はもう価値がないのですか?

A. いいえ。
法定耐用年数はあくまで「税務上の減価償却期間」の目安であり、耐用年数を過ぎたからといって建物の価値がゼロになるわけではありません。
実際には、管理状態やリフォーム状況、立地などによって、法定耐用年数を超えても十分な賃貸需要があるケースは多くあります。

Q2. 中古一棟物件の耐用年数は自分で自由に決めてよいですか?

A. 原則として、自分で勝手に決めることはできません。
税務上のルールにしたがって計算する必要があり、具体的な残存耐用年数の決定は、税理士などの専門家と相談しながら進めるのが安全です。

Q3. 減価償却だけを重視して物件を選んでも大丈夫ですか?

A. 減価償却はあくまで一要素です。
高い減価償却が取れる物件は節税メリットがありますが、

  • 立地
  • 将来の賃貸需要
  • 修繕リスク
  • 売却しやすさ

なども含めた総合的な視点で検討することが大切です。

まとめ|法定耐用年数を理解して、賢く一棟収益物件に投資する

  • 法定耐用年数は、「税務上どれくらいの期間で減価償却するか」を定めた年数
  • 一棟収益物件では、構造(RC・鉄骨・木造)や用途によって耐用年数が変わる
  • 中古の一棟物件は、残存耐用年数が短くなることで、年間の減価償却費が大きくなり、節税・キャッシュフローの面で有利になる場合がある
  • 同じ家賃収入でも、減価償却の違いで「手残りキャッシュ」が変わり、資金効率に大きく影響する
  • 実際の耐用年数や減価償却の扱いは、必ず税理士・専門家に確認しながら進めることが大切

法定耐用年数や減価償却を正しく理解することで、数字に基づいたより精度の高い投資判断が可能になります。
一棟収益物件の購入をご検討中の方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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